フィナステリドとPFS症候群について

フィナステリドは、アメリカのメルク社が開発した抗アンドロゲン薬のひとつで、1991年に開発が始まり1992年に前立腺肥大の治療薬として商品化され、以降は前立腺肥大症ではフィナステリドは高用量で使用されドキサゾシンと組み合わせて用いることで、前立腺肥大症の病状進行の危険性を低減する効果があることが確認され、広く前立腺肥大治療薬として使われています。その一方で低用量で使用した場合の研究も行われており、1mg用量した場合には男性型脱毛症での毛髪の成長が見られることが発見され、1997年には男性型脱毛症(AGA)の治療薬としてプロスカーやプロペシアなどの商品名でアメリカのFDAに認可され、現在では多くの国で男性型脱毛症(AGA)の治療薬として承認されており、日本でも2005年から承認され男性型脱毛症の治療薬として使用されています。

 

 

フィナステリドが男性型脱毛症(AGA)に効果がある理由としては、男性ホルモンテストステロンをDHT(ジヒドロテストステロン)へ変換する酵素2型5-α還元酵素を阻害する作用があるためです。このDHT(ジヒドロテストステロン)が多く体内で生成されると前立腺肥大などの症状をもたらし、また男性型脱毛症(AGA)の原因となる脱毛を引き起こす作用が発生しますが、DHT(ジヒドロテストステロン)の生成を阻害することで、前立腺の状態を正常に戻し、また頭皮における発毛サイクルの状態を正常に戻すことが期待できます。一般に男性型脱毛症(AGA)の治療薬としては、ミノキシジルが有名ですが、ミノキシジルが外用により頭皮の血行や状態を改善し発毛そのものを促すのに対して、フィナステリドは服用することで脱毛の原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制することで抜け毛になる原因を取り除くという作用をもたらすというものです。そのためプロペシアなど服用するタイプの脱毛薬の場合には、脱毛の原因を改善するだけであって発毛そのものの効果はありませんが、発毛を阻害していた物質が取り除かれるため、結果的に多くの場合には発毛効果があると言われています。

 

 

その一方でプロペシアなどでは副作用に関してもいくつか報告されており、そのひとつがPFS症候群と呼ばれるものがあります。このPFS症候群は、ポストフィナステリド症候群と呼ばれるもので、プロペイアの服用により発生し、さらに服用を中止してもその症状が改善しないというもので、さまざまな悪影響をもたらすとされており性的、身体的、精神的といった症状があり、性的な症状としては性欲の低下や完全に失われる、勃起不全やED、朝勃ちの消失、性的な快感の消失や不感症、オーガズムを得られない、陰茎の収縮やしびれ、射精障害、ペイロニー病(陰茎形成性硬化症)などがあり、身体的な症状としては、女性化乳房、慢性疲労やだるさ、筋肉の萎縮、筋力の低下、筋肉のけいれん、肌の乾燥や体温の低下、太りやすくなるといったものがあり、また精神的な症状では、重度の記憶障害や不眠症、うつ病、不安感や感情が平坦になったり、問題解決能力の低下や理解力の低下といったものがあり、特にメンタルの影響が大きい症状がPFS症候群になると発症するとされます。

 

 

このPFS症候群に関しては、2013年にハーバード大学において実際の患者の募集を行い研究が行われています。これらの研究結果としては、ある医薬品を併用することでリスクを回避できるというものでしたが、その医薬品を使うことじたいにもリスクが存在しており、根本的な解決にはつながらないものであり、そのため、プロペシア服用によるPFS症候群の発症を抑制する方法は見つかっていません。一方で、明確な原因は特定されていませんが、仮説として脳内物質のひとつneurosteroidの減少が原因であることが考えられており、すでにこの原因については2008年にマウス実験で確認されているものです。しかし、一度減少してしまったneurosteroidを増やすための治療法は確立しておらず、結果としてプロペシアの服用をやめたあとも症状が続く状態になるとされており、非常に重篤な悪影響を及ぼすと可能性があります。いずれにしても男性ホルモンに対して作用する治療薬であることから、これらのホルモンバランスが壊れることで発生するためプロペシアなどを利用する場合には十分に注意して使用する必要があります。

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